中小企業の社長が離婚する場合、会社名義の財産も、離婚の際の財産分与の対象となるのか、という問題があります。

そもそも財産分与は、実質的には夫婦の共有と考えられる財産を、離婚の際に清算しようというものです。

会社(法人)は、個人とは別の独立した存在ですので、会社名義の財産は、あくまで会社の財産であって、夫婦の財産ではない、ということになります。

しかし、実際には、中小企業の経営者の中には、個人で使用する自動車でも、会社名義で購入するような場合もあると思われます。また、家族で生活するためのマンションを会社名義で購入している、という場合もあると思われます。

こういったケースですと、通常の夫婦であれば、夫婦どちらかの名義であるはずの自動車やマンションが、会社の名義になり財産分与の対象とならないのは、おかしいと思われる方もおられます。

確かに、会社名義の財産を、夫婦のどちらか一方、あるいは夫婦の意思のみで、他の会社の関係者(出資者や役員)の承諾がなくても処分できるような場合まで、あくまで会社の財産であって、夫婦の財産ではない、とすることは、適切ではありません。

そこで、裁判例の中には、会社が例えば夫婦だけの同族会社である場合であれば、会社の財産も財産分与の対象として夫婦で分けるべきという立場に立ったものもあります。

同族会社を経営されているご夫婦の離婚の場合は、会社名義でも夫婦の財産と考えることが出来る可能性もありますので、離婚協議等をなされる場合は、慎重に判断していただく必要があります。

藤本法律事務所