父親が親権をとる場合
離婚の際、未成年のお子さんがいる場合、親権者を夫婦(父母)のどちらかに定めなければなりません。
夫婦とも親権者となることを望み、夫婦間の協議で決めることが出来ない場合は、家庭裁判所の離婚調停において、調停委員をはさんで夫婦間で話し合いをすることになります。
それでも話し合いがつかない場合は、離婚訴訟によって裁判所が決定するしか方法はないということになります。
裁判所が親権者を指定する場合、特に、お子さんが乳幼児の場合や、小学校低学年の場合は、妻が親権者と指定されることがほとんどといって良いと思います。つまり母親が優先される、母性が優先されるのです。もちろん、妻が子を虐待したり、育児放棄をしたりと、妻側に大きな問題点があれば、夫が親権者に指定されます。
では、妻に大きな問題点がない場合、どうしたら夫が親権者として指定される可能性が出てくるのでしょうか。
もともと、親権者の指定において、母親が優先されるのは、子の養育において、母親と子が心理的に緊密な関係を築いているからだと考えられます。
つまり、父親は、特に日中は、仕事で家を空けていることが多く、子どもとの関わりが少なくなりがちですが、他方、母親は家で家事育児をしている時間が多く、必然的に、子どもとの関係が緊密になっていきます。また、父親は、子どもの育児に対して関心は薄く、実際には母親に育児を任せてしまっている家庭も多いと思います。
そういう場合に、離婚問題に直面してから、急に、父親が育児に関心をもっても、それまでの実績が薄いため、やはり父親は母親には勝てないということになります。
しかし、近時は、父親も積極的に育児に参加して、夫婦が同様に育児を担っている夫婦も増えてきているようですから、そういう夫婦では、親権者の指定にあたって、同じスタートラインに立つことになります。
子どもが生まれたときから、離婚に備えて育児に積極的に関わる、という方は、おそらくいないとは思いますが、とにかく、積極的に育児に関わってこなかった限りは、親権を得ることは極めて困難になります。妻の育児をよく「手伝っている」という程度ではダメだと思います。
そうすると、夫婦のあり方や、働き方も変えていかなければならなくなると思います。
逆に、やはり、裁判所において、父親を親権者と指定してもらうことは、なかなか困難なことが、ますます明らかになってしまいます。
そうすると、父親が親権を取得したい場合には、何とか夫婦間の協議で定めるほかないことになります。そのためには、離婚を望む理由・事情、経済的な問題をも含めて今後の生活状況の見込み、子どもの将来など、様々な要素を十分に検討し、粘り強く協議を続けるほかないと言えます。
このほか、子どもが10歳くらいになれば、裁判所も、子どもの意思も尊重される傾向にありますから、子どもが父親と一緒に暮らしたいと真に思う場合には、父親が親権者となる可能性が大きくなります。しかし、そのように子どもに言ってもらうには、それまで、相当に育児に関わってきた実績が必要でしょう。