子供の引き渡し請求

子供の引き渡し請求が問題となる場合

●離婚前(別居中、離婚協議中など)
夫婦関係が悪化し、相手方が子供を連れて家を出て別居を開始した場合などの中には、その結果、子供の養育、監護が適切ではない状態となる場合があります。
夫婦が別居中、相手方が、突然、あなたの元から無断で子供を連れ去ってしまう場合もありえます。
このような場合、相手方に子供の引き渡し請求を行って、子供を取り戻す必要が生じます。
なお、このとき、実力で、あるいはこっそり無断で子供を取り戻してくるようなことは、絶対にしてはいけません。相手がそのようなことをしたからといって、同じようなことはしてはいけません。必ず裁判所の手続を踏まなければなりません。
逆に、相手方が単身で家を出て別居となった場合に、あなたの元で生活している子供の引き渡しを求められることもあります。
また、あなたが子供を連れて家を出た場合でも、相手方から子供の引き渡し請求を受けることもあります。

●離婚後
離婚後においても、親権・監護権を得ているにもかかわらず、相手方が子供を連れ去ってしまった場合も、相手方に対して子供の引き渡し請求などにより、子供を取り戻す必要があります。
さらに、離婚によって、親権・監護権を得られなかった場合でも、その後、何らかの事情で子供の監護・養育に不適切な状況となり、子供の引き渡しを請求しなければならない場合もありえます(その場合は、監護者の指定や、親権者の変更も念頭におくことになります。)。
ここでも、決して実力で、あるいはこっそり無断で子供を取り戻すようなことはしてはいけません。必ず裁判所の手続を踏む必要があります。

離婚前(別居中など)の子供の引き渡し

●子供の引き渡し請求について(離婚前)
夫婦間(あるいは離婚した元夫婦間)の協議によって、引き渡しが実現し、解決できれば、それにこしたことはありません。
しかし、協議で解決できない場合には、家庭裁判所の手続を利用せざるをえなくなります。
また、協議する時間もない場合もありますし、そもそも相手方が協議のテーブルに着かないこともあります。
むしろ、協議している時間もない緊急性の高い場合のほうが多く、家庭裁判所の手続を早急にとることになります。
離婚前の夫婦の場合は、夫婦とも子供の親権を有していますので(共同親権者)、相手方が子供の面倒をみることは、違法なことではありません。
そこで、子供の引き渡しの審判のほか、子供の監護者の指定の審判を申し立てます。
このとき、「審判前の保全処分」(子供の引き渡しの仮処分)もあわせて申し立てるのが通常あるいは、むしろ必須であり、この手続にこそ意味があるといえます。
これは、裁判所の審判を待っていたのでは間に合わない、というような緊急性がある場合に、裁判所の審判に先行して、仮に裁判所の決定を得ておく、という手続です。子供の引き渡し請求は、それ自体が緊急性のある場合とも言えるからです。
また、審判前の保全処分は、子供の引き渡しの審判の申立なしにはできませんので、必ず、3つの手続をセットで申し立てます。
但し、実際には、「審判」も「審判前の保全処分」も、いずれも手続は同時に進行することも多く、実質的には1つの手続ともいえます。
もっとも、審判前の保全処分の審判は、確定しなくても効力が生じますので、子供の引き渡しを命ずる保全処分がなされれば、たとえ、相手方が不服申立(即時抗告)をした場合でも、子供の引き渡し(取り戻し)を実現できるという点に意味があります。
なお、子供の引き渡しの調停もありますが、緊急性が高いのですから、調停はお勧めできないケースが多いといえます。

●手続の流れ
申立書を作成して提出します。これまでの監護養育の状況、連れ去りの状況、相手方の元での子供の生活状況、あなたの生活状況等を文章にまとめるなどします。
手続においては、相手方のもとで子供が養育・監護されることが適切ではないことを示す資料、あなたの元で適切で安定した養育・監護がなされてきたことを示す資料等を裁判所に提出する必要があります。
また、申立をしたら、裁判所から、「審問期日」が指定されます。これは、裁判所に出向き、裁判官から直接事情を尋ねられる手続です。「審問期日」は、申立後、早い時期に指定されることが多いといえます。
このほか、家庭裁判所の調査官により調査がなされます。
調査官による調査は、夫婦双方の生活環境、これまでの子供の養育状況その他の事情を調査し、裁判官が、子供の引き渡しを認めることが適切かどうかを判断するに必要な情報を得る手続です。調査官の調査は、あなたや相手方、子供と面談をして話を聞くことが主な内容となります。場合によっては、他の関係者(保育園の先生など)から話を聞く場合もあります。
そのうえで、調査官は調査報告書を作成します。
裁判官は、この調査報告書を重要な資料として扱い、そのうえで判断(審判)を行います。
なお、状況によっては、話し合いで解決したほうがよい、話し合いで解決できる、と考えられる場合は、裁判所は、調停を実施する場合もありえます。

●子供の引き渡し請求の申立等を行う時期
今、子供の生活環境・養育環境が適切ではない、という状態にあるわけですから、出来るだけ早く行うべきです
離婚協議中に、相手方配偶者によって子供が連れ去られた場合には、離婚問題の解決とあわせて子供の問題も解決すれば良い、とお考えの方もおられると思います。
しかし、子供の福祉・子供の利益のためには、離婚問題とは切り離し、まずは、出来るだけ早く子供の引き渡し請求を行う必要があるケースが大半と思います。つまり、まず、子供を元の状況あるいは安定した状況に戻した上で、その後に、じっくりと親権者の指定についての解決を図るべきなのです。
また、離婚時において、子供の親権者を指定することになりますが、子供が相手方に連れ去られたままの状態が長期間継続した場合は、親権者の指定の際に、あなたにとっては不利な要素となってしまうことも考えられます。この点も、出来るだけ早く手続をとるべき理由です。

●子供の引き渡し請求を認めるかどうかの基準
子供が別居中の夫婦(父母)の、どちらで生活することが、子供が心身ともに安定し、そして、健やかに成長していくために、よりふさわしいのか、という点に尽きます。つまり、「子供の福祉」にかなうか、と言われる要素です。

●注意しなければならない点
夫婦仲が悪くなり、別居している状態ですから、どうしても相手を攻撃したくなったりするものです
しかし、そうすると、夫婦間で、子供の取り合いをしているかのような状況になってしまい、子供がどのように生活し、養育されるのが、子供の福祉・幸福にかなうのか、という観点から考えるこの手続には相応しくありません
やはり、子供の引き渡し請求は、子供の福祉・幸福のための手続、ということを十分に理解していただく必要があります。
相手方を攻撃するのではなく、今後も、相手方も子供の親として、貴方とともに、何らかの方法で、共同して監護・養育に関わっていくことを望んでください。
また、仮に、子供の引き渡しが認められた場合でも、相手方と子供の面会交流については、積極的に協力していただく必要があります。
逆に、子供の引き渡しが認められない場合でも、貴方も、養育費の負担、子供との面会交流などによって、貴方も積極的に子の監護・養育に関わってください。

●子供の引き渡し請求が認められる可能性
実際には、相手方における子供の監護状況・養育状況が不適切であると認められる可能性、つまり、子供の引き渡し請求が認めれる可能性は高くないかもしれません。
相手方も親権者であり監護権がある以上、簡単には認められないことは確かです。
特に父親(夫)から母親(妻)に対する請求の場合は、非常に厳しいのが現実です。
そこで、請求が認められる可能性が低いのであれば、請求はやめておこうか、とお考えになる方もおられると思います。それも1つの考え方だと思います。紛争を、これ以上は拡大したくない、というお考えもあると思います。
しかし、貴方自身が子供と一緒に暮らしたい、一緒に居たい、という思いだけではなく、子供にとって、貴方と一緒に居ることの方がより幸せだ、子供がより幸せに生活できる環境も整っている、との自信をお持ちであれば、子供の引き渡し請求を行ったほうが良い、とも言えます。これも1つの考え方です。
引き渡し請求を行わない限りは、夫婦がやり直す以外には子供が戻ることはないといっても過言ではありませんし、迷っていて時間が経てば経つほど、引き渡し請求が認められなくなる可能性がさらに大きくなっていきます
また、何よりも、子供の引き渡し請求が、貴方自身の利己的な気持ちからではなく、子供の幸せを願う気持ちからのものだからです。そして、ここで、できる限りのことは行っておいたほうが、子供にとっても幸せなことともいえます。
しかし、子供の引き渡し請求を行う場合でも、くれぐれも、子供の取り合いにならないようにしなければなりません。夫婦関係は維持できないとしても、協力して子供を監護・養育していく体制をつくることを目指してください

●子供の引き渡し請求が認められた場合
子供の引き渡しの実現は、緊急性を要するものですので、直ちに行動を起こす必要があります。つまり、相手方と連絡をとり、実際に子供の引き渡しをするように求め、引き渡しの日時や場所を定めます。
この時点では、審判は確定していませんが、保全処分の審判については、確定しなくても効力が生じますので、審判に基づいて引き渡しを求めることも、誤りではありません。
但し、相手方が単純に拒否したり、高等裁判所に不服申立(即時抗告)をするとして拒否する場合もありえます。
その場合は、保全処分の審判は、確定しなくても効力が生じていますので、強制執行の申立を、地方裁判所の執行官に対して行います。この強制執行は、保全処分の審判から2週間以内に行う必要がありますので、速やかに申立を行うべきです。但し、相手方の不服申立の際に、執行停止が決定される場合もあり、その場合は、強制執行はできなくなります。
強制執行の方法は、原則として、直接強制を選択します。これは、裁判所の執行官に、例えば、相手方の自宅住居に実際に行ってもらい、子供を連れてきてもらう手続です。

●相手方が不服申立(即時抗告)をした場合
高等裁判所において、再び相手方と争うことになります。
なお、保全処分の審判は、既に効力は生じていますが、即時抗告の際に、執行停止等の申立がなされる場合もあり、それが認められれば、保全処分に基づく強制執行はできなくなります。
高裁での即時抗告が棄却された場合には、すぐに引き渡しの実現に向けて動くべきです(交渉、強制執行)。

●人身保護請求
相手方が、強制執行に対しても、子供の引き渡しを拒絶するなどして、強制執行が功を奏しない場合は、地方裁判所に人身保護請求を申し立てます。

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