弁護士コラム

有責配偶者からの離婚請求

2013.02.08

例えば、夫が妻以外の女性と不倫関係となったうえ、家を出て不倫相手の女性と一緒に暮らすようになり、もはや夫婦関係は破綻して修復不可能な状態となったとします。

夫としては、妻とは離婚したいと思っています。しかし、妻は離婚を拒否しています。家庭裁判所での調停でも、夫婦の意思は一致せず、不成立となりました。
このような場合、夫は、離婚訴訟を提起して、裁判所に離婚を認めてもらうことはできるのでしょうか。

もはや、夫婦関係は完全に破綻して修復不可能な状態となっておりますので、民法で定める「離婚原因」は存在するといえます。

では、裁判所は離婚判決を出すでしょうか。

もし、離婚原因が存在する、ということのみで離婚判決を出すとすれば、浮気をした夫が妻を追い出して別の女性と結婚できることになり、非常に身勝手な行動を許すことになってしまいます。離婚判決を出す場合、裁判所が夫の身勝手を援助するような結果となってしまいます。

他方で、こういったケースの中には、もはや夫婦であることにほとんど意味がない状態となっていることもあると思います。

そこで、離婚を求める夫の態度は不誠実であり、法律も、裁判所も、夫に力を貸すことはできないのではないか、つまり、信義誠実の原則に反するのではないか(信義則違反ではないか)ということを検討し、まさに信義則違反といえる状況であれば、離婚を認めないという立場をとっております。

最高裁判所は、①相当の長期間の別居、②未成熟な子の不存在、③相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に過酷な状態に置かれるなど著しく社会正義に反する特段の事情の不存在、という要件を満たした場合、不倫をした本人からの離婚請求も信義則違反ではない、離婚が認められると考えております。

ただ、これらの要件を満たすかどうかの判断は、非常に難しいものです。ある意味、裁判をやってみないと結果はわからない、といってもよいと思います。