弁護士コラム

DNA鑑定と親子関係

2014.04.23

報道によれば、DNA鑑定で血縁関係がないと証明されれば父子関係を否定できるか、ということが争われた訴訟があり、今回、最高裁判所でこの点について判断がなされることになったとのことです。

ちなみに、この訴訟の第一審である大阪家庭裁判所、第二審である大阪高等裁判所は、いずれもDNA鑑定の結果から、父子関係を否定できると判断したとのことです。

そもそも、妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定されます。これを覆すには、夫が、この出生を知ったときから1年以内に、嫡出否認の訴えを提起する必要があります。
そこで、DNA鑑定などにより、血縁関係がないことを立証して、父子関係を否定するのです。

では、出生を知ったときから1年を経過してしまった場合は、どうなるのでしょうか。
1年を経過した後にDNA鑑定をしてみたら血縁関係がないことがわかった場合、父子関係を否定できるのでしょうか。

最初に紹介した事件は、こういうケースです。

まず、1年を経過しているので、嫡出否認の訴えは提起できません。
しかし、大阪家庭裁判所や大阪高等裁判所は、親子関係不存在確認の訴えを提起でき、そこで、DNA鑑定によって血縁関係が否定されれば、親子関係(父子関係)も否定される、と判断しています。

しかし、上記報道によれば、最高裁判所は、弁論を開くこととしたとのことです。最高裁判所は、原審(ここでは大阪高等裁判所)の判決を見直す場合に弁論を開きますので、今回も、大阪高等裁判所の判決を見直す可能性が大きくなっています。

つまりDNA鑑定で血縁関係が否定されても、父子関係を否定できない、という結論になる可能性が大きいということです。

こういったことが議論されたり裁判になったりするということは、夫婦や親子、家族は、生物学的に定まるものではなく、その社会の価値観・文化といったものが反映されるという例です。ちなみに、社会の価値観や文化を反映させた結果、どういう結論になるべきなのか(父子関係を肯定するのか否定するのか)は、今後の議論に委ねるほかないと思います。