養育費

養育費

養育費

離婚して、子供と別々に暮らすこととなったとしても、親子関係は続きます。親として、子供の養育に関わっていかなければなりません。
そこで、子供の生活費の一部を負担する、という関わり方をすることになります。これが養育費の支払いです。
養育費の金額は、夫婦であれば夫婦の収入全体のうちの、どの程度を子供の生活費として支出しているのか、という視点から決めていきます。子供には、両親の離婚の責任はないので、両親の収入を、両親が夫婦である場合と同じ割合で子どもさんの生活費として負担させようというものです。
そして、子供の生活費の金額が決まれば、あとは、これを両親でどのように分担するか、そして、子供と離れて暮らす親の分担額が、子供とともに暮らす親へ支払う養育費ということになります。
このようにして養育費は算定されるわけですが、非常に計算が面倒ですので、現在では、裁判所は、このような養育費の算定の考え方を一般化して、算定表を作成し、双方の年収を、算定表に当てはめて養育費額を計算しております。
養育費の算定表については、裁判所のホームページから入手できます。

(養育費・婚姻費用算定表)
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

この算定表は、通常の場合を想定したものですので、何らかの特別な事情があれば、その事情にもよりけりですが、算定表を修正して養育費額を導き出すこともありえます。例えば、算定表は、子供が公立学校に通うことを前提としておりますが、私立学校に通っており学費等の負担が大きいような場合は、算定表へのあてはめ結果を修正することもありえます。

養育費を定める手続き

(1)夫婦間の話合い(協議)において、合意ができれば、それにこしたことはありません。
協議離婚の場合は、その協議において、あわせて養育費の協議をすべきです。養育費の取り決めを棚上げして、協議離婚をしてしまうことは好ましくありません。また、離婚調停、離婚訴訟においても、養育費について話合い、また主張・請求することもできます。

 

(2)離婚時に養育費について定めるべきではありますが、何らかの事情で定めなかった場合、離婚後においても、これを定めることができます。
子供の父母(つまり元夫婦)の間の協議にて、合意ができれば、それにこしたことはありません。
しかし、協議ができない場合には、家庭裁判所に調停審判の申立をすることができます。
調停は、離婚調停と同じく、家庭裁判所において、調停委員が話し合いを取り持ってくれる制度です。
これに対して、審判は、養育費の額等を裁判所が決定するもので、裁判の一種です。

 

(3)一旦定めた養育費額を、増額または減額して欲しい場合もありえます。養育費の支払期間は長期ですので、その間に、当初に予想しなかった経済状況その他の事情の変化もありえるからです。例えば、養育費の支払義務を負う者が、リストラにあって収入が減少した、逆に、事業に成功し、収入が大きく増加したといったこともありえます。予想していなかった高額な医療費の負担を余儀なくされたといった、といったこともありえます。
こういった場合、養育費の減額または増額を求めることが可能な場合もあります。
なお、離婚時に、離婚協議書や調停調書、和解調書などで養育費の合意をし、あわせて、「債権債務がないことを相互に確認する」といった条項を入れることが通常ですが、この条項があっても、養育費の増額または減額請求の障害にはなりません。
養育費の増額や減額について、協議で合意できればそれにこしたことはありませんが、合意できない場合は、家庭裁判所での調停や審判の申立をすることができます。
なお、当初予想しなかったような事情が生じた(事情変更)、といっても、どのような事情変更でも養育費額の増減が認められるものではありません。多少の事情の変化はもともと折り込み済みだからです。事情変更の結果、当事者間(元の夫婦間)において、公平を欠くようになるような場合に限られます。

 

(4)家庭裁判所の調停や審判で、養育費額を定めた場合は、それを調停調書、審判書に記載しますので、他に書類を作成する必要はありません。
しかし、当事者間の話合い(協議)で定めた場合には、合意書(協議書)を作成しておく必要があります。そして、できるだけその合意書は、公正証書にしておきましょう。
養育費は、子供のためのものです。支払う立場の方(義務者)も、支払を受ける立場の方も(権利者)も、子供の福祉のために、きちんと取り決めをしていただくことを、強く、お勧めします。

養育費の支払時期

養育費の支払義務は、一般に、権利者が請求したときから生じる、とされています。
通常は、養育費分担の調停または審判の申立をしたとき、ということになります。
もちろん、離婚前から、離婚協議や離婚調停、離婚訴訟にて請求されている場合は、離婚時から養育費の支払義務が生じることになります。
子供が成人に達したときに、養育費の支払義務はなくなることが通常です。
但し、調停などにおいて、子供が大学を卒業するまで、と主張される場合も多いと言えます。 夫婦(父母)の双方で、「大学卒業まで支払う」という合意ができるのであれば、それで良いのですが、そういうケースでも、「大学卒業まで」という不確定な時期を合意するのではなく、具体的に「◯◯年◯月まで」との合意をすべきと言えます。
そうでないと、将来のトラブルのもとになります。

再婚と養育費

権利者(監護親=子供を育てている親) が再婚したが、子供が再婚相手と養子縁組をしていない場合

権利者(監護親)の再婚相手に収入があっても、再婚相手には、子供を扶養する義務はありません。そのため、権利者の再婚によっても、養育費の支払義務には何ら影響せず、それまでの養育費額が変更されることにはなりません。

権利者(監護親=子供を育てている親) が再婚したが、子供が再婚相手を養子縁組をした場合

養子縁組がなされると、子供に対する扶養義務は、第1次的には養親(つまり再婚相手)が負うことになります。従って、義務者(非監護親)は、養育費を支払う必要はなくなります。
但し、再婚相手(養親)に、資力がない場合は、義務者(非監護親)も養育費を負担しなければなりません。養子縁組がなされても、親(実親)であることにはかわりなく、子供に対する扶養義務を負うからです。

義務者(非監護親=養育費を支払っている者) が 再婚した場合

義務者は親であることにはかわりないので、扶養義務を引き続き負い、養育費を支払う義務はなくなりません。しかし、義務者は、再婚によって、再婚相手に対して扶養義務を負い、義務者が扶養すべき相手が増えますので、負担すべき養育費の金額を変更させることになります。
つまり、再婚相手に収入がない場合は、これまで支払ってきた養育費の支払金額を減らしうることになります。

義務者(非監護親=養育費を支払っている親)が 再婚し、再婚相手との間に、新たに子供をもうけた場合

この場合も、義務者の扶養すべき者が、さらに増えるわけですから(再婚相手、さらに新たに出生した子供)、これまで支払ってきた養育費額は変更されうることになります。

再婚や再婚相手との間に子供が出生した場合、養育費を支払っている親(義務者=非監護親)が扶養義務を負う相手が増えることになるのであれば、それまで支払ってきた養育費額は見直しの対象になります。
また、子供との養子縁組によって、第1次的には養親が子供の扶養義務を負うことになりますので、この場合も養育費額は見直しの対象となりえます。

離婚後、養育費を増やして欲しい場合

離婚後、一度決まった養育費の増額が認められる場合もあります。
ただしそれは、当初予想しなかった事情の変更(収入の著しい増減、高額な医療費など)があり、元パートナーとの間で公平を欠くようになった場合に限られます。

なお、最初に養育費を合意した文書に「債権債務がないことを相互に確認する」という条項があったとしても、それは養育費を増額できない理由にはなりません。

離婚後、養育費を払えなくなった場合

養育費の滞納にはご注意ください。財産が差し押さえられる、面会交流が制限され子供に会えなくなるなどのリスクがあります。

養育費の支払いが難しくなった場合には、弁護士にご相談ください。元パートナーとの話し合いや裁判所の手続きにより、養育費を減額できる可能性があります。

お気軽にご相談ください

養育費を支払う立場の方、受け取る立場の方いずれも、ご不安やトラブルを抱えておられる場合はお早めに、弁護士にご相談ください。