この前、裁判所が親権者を指定する際の判断基準として、これまでの子どもの養育の実績が重要、ということを書きました。
このほかに、判断の基準となるものに、特に乳幼児の場合には、「母親優先」「母性優先」というものがあります。
乳幼児にとっては、情緒面の成長において、母親の存在が不可欠という考え方によるものといえます。この点から、乳幼児の場合、「母親優先」は大きな地位を占めることになります。また、「母親優先」と「養育の実績」が一致することが多いともいえます。
ただ、近年は、家族内での役割分担が変化しております。家庭によっては、父親がこれまでの母親のような役割を果たしている、つまり父親が子どもと心理的に緊密な関係を築いている、というケースもあると思います。
こういう場合は、「母親優先」といっても、旧来からの母親の役割を父親が担っているといえますから、父親が親権者に指定される可能性が高くなります。
しかし、例えば、父親が親権を得るために、夫婦の離婚問題が発生してから慌てて子供と緊密な関係を築こうとしても,手遅れといえます。
そもそも親権者の指定は、夫婦で子を奪い合うものではなく、離婚はするものの、その中で、子どもにとって最善の養育環境を確保しようというものなのです。