婚姻費用分担の問題は、夫婦関係を維持していくために、夫婦の生活費を夫婦間でどのように負担するか、という問題です。つまり、夫婦のうち、収入の少ない方が(収入のない方が)、収入の多い方に対して生活費の支払を求めるという問題です。
そして、通常、離婚を求めるとともに、婚姻費用の分担を求めるということはよくあることです。むしろ通常のケースです。
ただ、婚姻費用分担が、夫婦関係を維持するためのものであるとすると、夫婦関係が破綻し別居に至り、もとの円満な夫婦関係に戻れない状態となっている場合でも、生活費の支払いを求めることには違和感があると思われる方もおられます。また、離婚を求めると同時に、婚姻費用分担を求めるということも矛盾ではないか、と考える方もおられるでしょう。
確かに、もはや夫婦関係を維持しようという場面ではないため、そのような発想もありうることは理解できます。現に、そういった趣旨から、通常の婚姻費用分担義務を軽減して、相手方に支払うべき金額を減額した裁判例もあります。
しかし、婚姻費用の分担義務は、夫婦が円満に生活していることから生じるものではなく、夫婦であること、つまり婚姻という法律関係にあることから生じるとの考え方もあります。つまり、法律は、夫婦となったからこそ、夫婦双方に、相手方配偶者に対する扶助義務を課しているのであり、破綻していても、夫婦である以上は、婚姻費用分担義務が生じるというものです。
但し、個々の夫婦には、それぞれの個別の事情があるわけですから、事情によっては、例外的に、婚姻費用を負担しなくても良い、あるいは減額される、というケースも出てきます。